Just another philosopher of law

  • 更新:法学セミナー

    Work>Paperに追記

    法による強制は必要か?
    法学セミナー 2024年9月号(通巻836号) 28-33頁
    2024年8月

    特集「古典は招く」の一部です。主にジョン・ロックについて書きました。副題をつければわかりやすかったか…。(企画趣旨(大屋雄裕先生)は無料で、「プライバシーは必要か?」(松尾陽先生)はWeb日本評論に会員登録をすれば読めます。)

    拙稿は読み直すに書き方がわかりにくい。裁定・執行の両方を権利主体から分離せよ(できればその2つも分割せよ)、という主張がロックの『統治二論』に眠っているとしたら、それは『法と強制』で扱いきれなかった宿題を考えるうえでとても面白い、ということを書きたかったものになります。

  • 『法と強制』刊行されました

    拙著『法と強制:「天使の社会」か、自然的正当化か』が勁草書房さまより無事刊行されました。

    目次は勁草書房のページで確認できます。また、序章も公開していただいているのでぜひご覧ください。

    こちらの本については、一橋大学の教員著作ページにも紹介文が載っております。以下の内容の一部はそれと重複するところがあります。

    【成り立ち】

    この本は博士論文を元にしたものでして、博士論文の本体はちょうど新型コロナウイルス感染症の蔓延が日本でも始まった2020年に執筆されました。感染症対策において「強制によらない」ことがとても重視され、ソーシャル・メディアを見れば全員が「強制」のことを考えているのではないかとすら感じられる日々のなかで、「法が強制するとはどういうことだろうか」と踏ん張って書いたものになります。

    官憲に火炎放射器を持たせステイホームを求めるといった明らかに法と強制の話題に乗っかってきそうな事例が耳目を集める一方で、シャウアーが The Force of Law (2015)で論じていたような非強制的手段(例えば「公表」)の活用、おなじみアーキテクチャやナッジ(選択アーキテクチャ)があふれる中で、長く考えられるべき問題はなんだろうか…といったことをウンウンエイヤッとまとめたため、ちょっとした社会情勢の変化では吹き飛ばない…かは分かりませんが、しばらくは読んでもらえるに値するものが書けたのではないかなと思います。

    もっとも、その分やや生硬なところもあり、とりわけ第5章については今後やるべき課題を積み上げたバケット・リストのようです。これについては、今後背負っていくことになろうかと思います。

    【見どころ】

    この本の見どころを著者自ら挙げることで読書体験を限ってしまいそうですが、著者としてここは…というところがあるとすれば、第一にそれはノージックの「強制」研究です。ノージックの業績といえば、その著書『アナーキー・国家・ユートピア』の正義論への貢献か、Philosophical Explanations (Harvard University Press, 1981) における認識論へ貢献(Gettier問題関連)が想起されるところです。とりわけ前者との関係で、<どのようなときに提案は強制(脅迫)になるのか>という問題についても彼は一家言あり、Stanford Encyclopedia of Philosophyの‘Coecion’ (「強制」) 項目でも一つのターニングポイントとして取り上げられています。…まあ、拙著『法と強制』は、わけあってノージック説は採用しないのですが。

    もう一つ。シャウアーのThe Force of Law以外の本ももっと読まれるとよいな、という気持ちもこもっています。シャウアーについては那須耕介先生の先行研究でしっかり紹介・検討されていますし、シャウアー自身の書いた多くの論文がSSRNで公開されているため、読もうと思えば読めるのですが、やはり日本語でアクセスできるのが大事だと思います。 (彼の著作については一本だけ翻訳を見つけました。) 私の本がそんなにすごいインパクトになるかはわかりませんが、シャウアーの言っていることが面白いと思ってくださる人が増えたら嬉しいです。『法と強制』は、シャウアーのThe Force of Lawもまた支持しないのですが、実効性確保のために何ができるかに振り切っている点で色々と考えさせられる興味深い本だと思います。

    輪転機から生まれたばかりの本ですが、書店で見かけたらぜひお手にとって見てくだされば嬉しいです。

    >Work >Publication >Book カテゴリに追記。

  • 近刊:『法と強制』 (勁草書房)

    すでに各所でお知らせが出ておりますが、拙著『法と強制:「天使の社会」か、自然的正当化か』が2月に勁草書房より出版されます。

    (黒が印象強い書影)

    内容としては博士論文をもとにしたものなのでどうしても硬いところは残りますが、強制という切り口でみた法(「法の武器庫にあるのは強制だけなのか?*」「法は結局強制の問題なのか?」…)にご関心をお持ちの方だけでなく、「いやまてそもそも強制てなんぞや」という方にもお手にとっていただけたら嬉しいです。

    問題意識については先日投稿したWeb記事「法の強制性:デジタル社会は法の強制を消し去るか?」と地続きになっていますのでそちらもどうぞ。**

    * 「法の武器庫」:Frederick SchauerのThe Force of Law (Harvard UP, 2015)の第9章 “Coercion’s Arsenal”を参考にした表現で、若手哲学フォーラムでの研究報告で使った。同じワークショップの報告者のみなさまの手でXに残していただいたりブログ記事に使われたりして、一部でミーム化している。今回の本でもちゃんと索引に入れた。

    ** 細かいことを言うと、法学館憲法研究所さんに載せていただいたWeb記事の方は、博士論文を出した後に気づいたことや、今まで何となく感じていたが現在教員として所属している一橋大学大学院法学研究科ビジネスロー専攻(社会人大学院。千代田区一ツ橋にある)に着任してようやく言語化できたことを、博論の話題の延長線上で書いたものになっています。なのでこのWeb記事は、今回出版する書籍(博士論文)のミニチュア版というよりは、後日譚という性質を持っているところが大きいです。

    所感ほか後で色々足します。初めて学術出版をするに際しての感想反省もある。

  • 更新

    Work>Misc に追記。

    法の強制性:デジタル社会は法の強制を消し去るか?」  「デジタル社会と憲法」(第17回)、 法学館憲法研究所、2023年11月1日
    https://www.jicl.jp/articles/topics_digital_20231101.html

    なおこちらはオムニバス形式の連載の一部となっております。以下、第1回からのリストを載せておきます(主に自分が読み直したいときのために)。他の記事も興味深い内容ですのでぜひ。(各記事著者敬称略。)

    (さらに…)