やっとかという。この難しい時期に紀要が出た事自体がありがたい話。なお第19巻第1号は特別な記念号になっている。ご興味の向きはどうぞ。
>「強制性と法の概念:フレデリック・シャウアーのThe Force of Law」一橋法学 第19巻第1号 131-159頁 http://hermes-ir.lib.hit-u.ac.jp/rs/handle/10086/31124
内容はタイトルのとおり、Frederick SchauerのThe Force of Law (Harvard University Press, 2015) の検討。海外で発表した際「いまやAustin/Command TheoryといえばFredだよね」と言われて、そうなのかな?と疑問を呈するために書いた論文。
この本については雑誌で特集が組まれるなど、出版後に注目を集めた。評者によって観点が異なっていたため、論文中で全てを紹介することはしなかった。英語での書評特集のみになるが、備忘録的にまとめておく。
Jurisprudence誌の特集
>Jurisprudence Vol 9, Issue 2 (2018) Book Symposium: Frederick Schauer, The Force of Law https://www.tandfonline.com/toc/rjpn20/9/2
Jurisprudence誌の特集は、法概念論に着目したコメントが多めで、Ratio Juris誌は法哲学方法論に近い議論が多い。法の強制性を研究してきたG. LamondやR. C. Hughesの書評が収録されており、moral impact theoryのGreenbergも寄稿している。個人的にはPintoreの書評が最後の方面白かった。
Ratio Juris誌の特集
>Ratio Juris: Vol 29, No 2 (2016) https://onlinelibrary.wiley.com/toc/14679337/2016/29/2
>Ratio Juris: Vol 29, No 3 (2016) https://onlinelibrary.wiley.com/toc/14679337/2016/29/3
Ratio Juris誌の方は2号に渡っている。難解な論文が多い。Greenの論文は華はないがHartの法実証主義を支持するものだったらこうなりますね、というプレインな論文。Spaakの論文はSchauerのAnti-Essentialismに「本気で言ってる?」と疑ってかかった上で、「ちなみにそれはOlivecronaがやってるよね?」と北欧リアリズムの検討をすすめる。難しいけど言うべきことを言っている論文。
あとRatio Juris誌のNo 3の方にはMorrisonの ‘Law Is the Command of the Sovereign: H. L. A. Hart Reconsidered’ という強気の論文が載っている。Hartの議論のあれもおかしいしこれもおかしい、という形で正面突破をする元気の出る論文。(成功しているかは措く。)
本
また、The Force of Lawに触発された、こんな本もある。(ちゃんと消化していない。)
>Bezemek, Christoph, and Nicoletta Ladavac (Eds.). (2016). The Force of Law Reaffirmed: Frederick Schauer Meets the Critics. Springer. https://www.springer.com/gp/book/9783319339863
またこういう本も出ている。
>Bersier-Ladavac, Nicoletta, Christoph Bezemek, and Frederick Schauer (Eds.). (2019). The Normative Force of the Factual. Springer. https://www.springer.com/gp/book/9783030189280
Springer、値段が高いんだよなあ。一応図書館でオンラインアクセスできるおかげで、外出しないでも閲覧できる。